4番目といたしまして、キャリア教育について伺います。
次世代を担う子どもたちは、現在、大きな社会環境の変化にさらされ、産業経済の構造的変化や雇用の多様化・流動化は、子どもたちのみずからの将来の捉え方にも大きな変化をもたらしています。
人間関係をうまく築くことができない、自分で意思決定ができない、自己肯定感を持てない、将来に希望を持つことができないといった子どもの増加がこれまでも指摘されているところであります。
キャリア教育とは、自分たちの生きていく道を発達段階に応じて考えていけるようにするための教育、社会に向けて主体的に進んでいけるようにするための教育であります。子どもたちが主体的に活動し、役割を知り、ほかの人たちの役に立つことを学ぶことが大切であり、地域の子どもは地域が育てるという環境の中、社会が間近に感じられることで、学ぶ意欲や学力も向上していくことです。
こうした子どもたちの成長に重要な小・中学校期におけるキャリア教育についてお聞きします。
中野区で現在行われているキャリア教育は、区立中学校では、総合的な学習の時間に各校の現場の特性やチャンネルを生かして実施しています。
一方、小学校では、社会科の体験授業の中で「お店屋さん調べ」といったものが行われていますが、キャリア教育として取り組まれているものはないようです。ほかの自治体の事例でも、仕事の種類を教えるというところにとどまっているようであります。「キャリア教育」という用語が平成11年に初めて中央教育審議会答申において登場したときから、小学校段階から発達の段階に応じてキャリア教育を実施する必要があると提言をされています。また、平成20年に閣議決定された「教育振興基本計画」でも、取り組むべき施策の一つとして、行政の連携により小学校段階からのキャリア教育を推進することが挙げられています。
小学校段階から発達段階に応じて社会の仕組みや自己と他者、あるいは社会の関係を理解できるようにするとともに、自分の力で自分の人生をつくるのだという意識を持たせたり、仕事に対する責任感や強い意思を持つようになるなど、将来の精神的、経済的自立を促したりするための取り組みを積極的に進めていく必要があるのではないでしょうか。
そこでお聞きします。社会人として必要な自立性や社会性を育て、一人ひとりの子どもたちがそれぞれの進路を探索、選択できる力を養う上で重要な基盤を形成する大切な時期である小学校段階から、年次にわたるキャリア教育の取り組みが必要ではないでしょうか。区のお考えをお示しください。
また、キャリア教育の評価は、育てたい資質や能力、態度を意識しながら「子どもの変容・成長」を評価すること、それに基づいて「活動そのもの」を評価することとなっています。実践を振り返り、キャリア教育の取り組みをPDCAサイクルの中で改善していくことが必要であります。
そこでお聞きします。評価による効果を子どもの成長につなげるためには、教育の現場が一人ひとりの育ちをしっかりと見取っていくことが大切であるということから、小学校から中学校卒業まで、各年次、成長に合わせて、一貫したキャリア教育の取り組みを行うべきと考えます。小・中連携、小・中一貫ということにもなじむ考えと思いますが、区の見解をお聞かせください。
最後に、現在行われているキャリア教育について伺います。
区立中学各校で行っている内容は、職場体験関連、職業調べ、ゲストティーチャー等、子どもたちにとって非常に有益であることは疑いがありません。このように人間力をつける、社会性を高めることなどが本来のキャリア教育なのですが、全国の中学校でも同様に、キャリア教育として実施されているものは、職業や就職といったものに偏っているようなのが現状です。子どもたちが社会に活躍する時代には、ワールドワイドで考える必要もあります。世界で通用させるためには、自国の文化、日本の文化にも通じていかなくてはならないと考えます。
行政でキャリア教育を実践する場合、地域との連携、コミュニケーション能力・人間力向上、情操教育に効果、といったことはわかりやすい表現ではありますけれども、ともすると、単なる職業観、コミュニケーション力向上ということだけにとらわれて、クローズアップされるおそれがあります。キャリア教育には、きちんとした理論とプログラムがあり、それを軸に、区として子どもをどう育てていくのか、家庭を一つの単位とした場合、どのような家族をつくっていくのか、どういう中野区民であってほしいのか、どういう社会人になってほしいのか、そういうことを議論し、プログラムをつくっていく専門的な知識も必要だと考えます。
そこで最後にお聞きします。学校の現場で個々に行われているさまざまな個別キャリア教育ももちろん重要ですが、キャリア教育はプログラムの構築と評価など体系的に取り組むことが重要であり、キャリア教育に見識のある専門家による参画、検証も必要ではないでしょうか。区のお考えをお示しいただきたいと思います。
以上で私の全ての質問を終わります。御静聴ありがとうございました。
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